材料を混ぜ合わせた時に混入する気体が、液中にそのまま残っていると見た目や品質に影響を及ぼすことがあります。材料に混入した気体を除去して、品質の保持や向上を実現した撹拌脱泡機の事例を紹介します。
接着剤のメーカー事例。製造する多品種の接着剤を脱泡するために効率のいい装置を求めていました。生産性と設備コストの面で、HR100とマッチ。脱泡機能面は、真空ポンプで強制的に脱泡し希望の脱泡レベルをクリアできました。
ハイ・ローターシリーズ独自の自公転比率により、高い分散能力が発揮されます。新潟大学との共同研究を通じて分散メカニズムを解明しており、その成果が取り入れていることが秘訣となっています。
80Lバッチが採用されている大型モデルです。そのため、たとえばHR200モデルであれば、20L容器を4カップまで搭載することができます。研究開発のラボスケール~こちらの80Lクラスまで、いずれも同じ機構と原理で機能する商品ラインナップがそろっています。開発プロセスから量産プロセスへとスピーディーに移管しようと考えている企業のニーズに、しっかりと応えられるモデルです。
アフターサービスなどを依頼しなくても、セルフメンテナンスのみで10年間使い続けられる耐久性を有しています。歯車や減速機などのないシンプル設計であることが、その大きな理由です。そのため、ランニングコストをおさえやすいというメリットを得られます。ちなみに、必要なセルフメンテナンスは「駆動リング交換」「オイル交換」「グリスアップ」の3項目です。
低振動かつ低騒音なので、環境問題に貢献できるところもハイ・ローターシリーズの注目ポイントです。オリジナルの「アウターリング方式」を採用しているため、シンプルな構造になっています。これが、運転中に生じる振動や騒音の大幅カットを実現できている理由です。また、シンプル構造によって、故障の発生頻度も低減されています。
LED材料の製造メーカーの事例。脱泡と仕上げ分散を同時に実施し、量産化と生産性アップを希望していました。容器サイズと、4個掛けで生産できる量産機としてHR100とマッチし、課題解決に至りました。
電機用接着剤などに利用される絶縁性ペーストは、気泡が残ったままでは、品質に影響を及ぼします。機械を使って撹拌脱泡することで、ペースト状の素材に混入していた気泡を、きれいに取り除くことができました。
液晶パネルの構造接着などに使われるUV硬化接着剤は、UV(紫外線)を照射すると短時間で接着する、速乾性の高いものです。材料に気泡が残っていると、品質に影響が出るため、取り除かなければなりません。手撹拌では難しいので、撹拌脱泡機を使って、液体の中に混入した気泡を、短時間できれいに取り除きます。
美容液は、メーカーによって様々な材料を用いますが、製造工程で液体に気泡が発生した場合、見た目や品質に問題が起こります。手撹拌では難しいことと、大量生産などの理由から、機械を使って撹拌脱泡を行います。大量の気泡も機械を使うことで、きれいに取り除くことが可能です。
PDMS(高精密転写用シリコーン印象材)は、主剤・硬化剤の2液が透明なので、撹拌状態を目視で確認することが難しいものです。気泡が混入していると転写の妨げとなるため、十分に脱泡する必要があります。撹拌脱泡機によって処理したところ、短時間で粘度差のある材料も均一に撹拌し、微小な気泡まで取り除くことができました。
銀ペーストは、粒子が沈殿しやすく、手撹拌した後の真空減圧に30分かかります。脱泡時に溶剤成分が揮発したことで、ボイドが発生し、品質に問題が生じることがあります。撹拌脱泡機の導入により、材料を均一に分散、微細な気泡まで脱泡でき、材料を変質させず短時間での処理が可能となり、課題を一掃できました。
電子部品メーカーでは、接着剤や樹脂などをシリンジに入れた状態で、脱泡処理をします。小さな径のシリンジの脱泡は手作業では難しいため、遠心脱泡と真空を組み合わせた撹拌脱泡機を用いて、高精度な脱泡処理を行います。本体構造が真空チャンバーとなっているので、シリンジを回転させずに真空引きのみの処理が可能です。
真空装置が効果的な働きをしているところが、注目すべき特徴のひとつとなっています。通常よりも微細な泡を取り除くことができるため、次のような効果も期待できます。
さらに、真空ポンプを別置きとすることによって、メンテナンスの負担軽減にもつながっています。
容量300ミリリットルの1カップ仕様を採用。そのため、仕組みの複雑化を回避した機構を実現しています。設定時間は10秒から300秒×5ステップです。また、設定チャンネルについても、上位機に劣ることなく、100チャンネルとなっています。
液体の脱気とは、液体中に溶け込んだ気体を除去する操作を指します。これは、化学分析の精度向上、食品や飲料の品質管理、さらには工業的な効率の向上を目的として、さまざまな分野で必要とされています。
液体中の気体を取り除く理由は、用途によって異なります。食品や飲料の分野では、酸化を防ぐことが主な目的です。例えば、酸素が溶け込んだ状態のままでは、酸化による風味の劣化や成分変化が生じる可能性があります。特に、ワインやビールなどの製品では、酸素の除去が品質維持に直結します。
一方、化学分析では、溶存気体が分析装置に悪影響を与えることがあります。例えば、液体クロマトグラフィーでは、溶離液中の気泡がポンプや検出器に問題を引き起こす可能性があるため、脱気は不可欠です。また、化学反応を行う際には、酸素や二酸化炭素が副反応を引き起こすことを防ぐために脱気が行われます。
さらに、工業プロセスにおいては、配管やポンプ内で気泡が発生することで装置の故障を招くリスクがあります。こうした問題を回避するため、脱気は装置保護の観点からも欠かせない作業とされています。
脱気にはいくつかの方法があり、それぞれ効果や適用範囲が異なります。ここでは、代表的な方法を詳しく解説します。
減圧脱気は、液体を減圧環境に置き、溶存気体の溶解度を低下させて気泡として除去する方法です。減圧状態では液体中の気体が気泡として現れるため、これを機械的に取り除くことで脱気が行われます。この方法はシンプルで比較的安価に実施できますが、完全に気体を除去するには限界があります。特に粘性の高い液体では、脱気の効果が低下することがあるため注意が必要です。
超音波脱気では、液体に超音波を照射することでキャビテーション現象を誘発し、気泡を形成します。その後、気泡が浮上して液体表面で消失することで脱気が進行します。この方法は短時間で効率的に脱気を行うことができ、大容量の液体にも適用可能です。また、減圧と併用することでさらに高い脱気効果を得ることができます。ただし、装置が高価であるため、用途によってはコストが課題となります。
凍結脱気は、液体を一度凍結させ、減圧下で融解を繰り返すことで溶存気体を除去する方法です。このプロセスでは、気体が氷中に閉じ込められた状態で取り除かれるため、高い脱気効果を得ることができます。しかし、処理量が限られるため、大規模な脱気には適していません。この方法は、特に高純度の溶媒が必要な化学反応で利用されます。
ガス置換では、不活性ガス(例:アルゴンや窒素)を液体中に吹き込み、酸素や二酸化炭素などの溶存気体を物理的に置換します。簡便で迅速に実施できる一方、低沸点の液体では蒸発が生じる可能性があるため注意が必要です。食品分野や工業的なプロセスでよく用いられ、特に酸化防止が重要な場合に適しています。
膜脱気は、特殊な中空糸膜を使用して溶存気体を選択的に透過させて除去する方法です。この方法は、省スペースで効率的な脱気が可能で、連続的な処理にも適しています。膜を利用するため、溶媒の組成が変化しにくい点も大きな特徴です。主に製薬や半導体製造の分野で利用されていますが、装置の初期投資が高額であるため、長期的な利用計画が必要です。
加熱脱気は、液体を加熱して溶存気体の溶解度を低下させ、気体を放出させる方法です。例えば、一旦煮沸した水を冷ます「湯冷まし」は、家庭でも行われる脱気の一例です。加熱による脱気は簡単に実施できますが、液体の化学組成が変化する可能性があるため、用途に応じた配慮が必要です。
独自の4カップ仕様により、最大80Lの大量処理が可能。
防爆仕様のため大量の材料を混ぜても安心
シリカ、高粘度樹脂、ワニス、セラミック増粘剤、オイル、UV硬化性樹脂など
1カップ300mlから7000mlまでの間で、中容量のラインナップが最多。
撹拌による温度上昇を抑制することができる
接着剤、フィラー、導電性ペースト顔料、酸化チタンなど
研究用コンパクト機のなかでも、100mlの小型モデルあり。
新規材料でのレシピ提案のアフターサービスあり
シール材、グリス、ガラスペースト、シリコーン樹脂、PDMSなど
2021年11月2日時点で、Google検索で「撹拌脱泡機」と検索し表示されたメーカー公式サイト19社の中から、「カスタマイズ可能」「レンタル可能」「デモ利用可能」の記載があった3社を表示しています。それぞれのメーカーが製造している機械のラインナップの特徴を基に、利用シーンをお勧めしています。
【選出基準】
多量・大容量の処理向き…一度に合計40L以上の処理を行える機械を製造しているメーカーを選出。
小~中容量の処理向き…300mlから1Lの容量で処理可能な機械を多種製造しているメーカーを選出。
小容量での開発処理向き…100mlの容量で処理できる機械を多種製造しているメーカーを選出。