「いつも通りに動かしているのに、なぜか混ざらない」「急に異音がし始めた」「モーターが停止してしまった」。製造ラインにおける撹拌機のトラブルは、単なる装置の不具合に留まりません。それは製品の品質低下、生産スケジュールの遅延、最悪の場合はライン全体の停止による経済的損失に直結します。
効果を期待して拡販を行ったものの、攪拌不良を起こしてしまうケースや、予期せぬトラブルが起きることもあります。なぜ正常に攪拌できないのか。トラブルの原因等についてをまとめているのでご覧ください。
撹拌機は、液体を攪拌することを前提に設計されています。当然、かけられる負担も含めて設計していますので、空運転させてしまうとモーターや軸などに計算外の負担がかかってしまいます。結果、モーターの損傷や撹拌機の破損を招いてしまうのです。特に運転後の切り替えや整備後の運転で起きるケースがあります。
現場でよく見られるのは、「タンク洗浄後、バルブを閉め忘れて液が供給されないまま撹拌スイッチを入れてしまった」というヒューマンエラーです。また、バッチ処理において原料の投入が遅れているにも関わらず、タイマー制御で撹拌が開始されてしまうケースも散見されます。
攪拌対象物には重量があります。重量を計算して設計されているケースも多いことから、攪拌対象物を変更することで比重が変わったり、あるいは粘度の影響によって攪拌不足や回転不良を起こすケースもあります。特に攪拌抵抗が大きなものになると負荷によって軸や攪拌羽に影響が出るリスクがあります。さらに、モーターそのものが破損する恐れもあります。そのため、攪拌対象物を変更する場合、一度製造メーカーに相談しましょう。多少の改造で対応できるケースもあれば、新規で制作しなければ対応できないケースもありますので、自己判断での攪拌は控えましょう。
攪拌羽根に物が不着している場合や堆積していると腐食・摩耗を起こします。これにより攪拌効率の低下を招きます。正常の範囲で仕様していても、摩耗は避けられませんので、メンテナンスを怠ることでやがては攪拌不良を起こすリスクが高まります。
撹拌機もまた、次第に劣化していくものです。軸受けの損傷もあれば、シール材は劣化してしまいます。長らく使用していれば、仮に毎回健全に、正しく使用していたとしても劣化は免れません。あまりにも長く使用している場合には、入れ替えも検討しましょう。
劣化は「消耗品」と「準消耗品」で考える必要があります。
攪拌対象の温度が想定より低い、あるいは反応熱で局所的に高温部が生じると粘度が急激に変化し、撹拌抵抗が跳ね上がります。結果としてインペラがキャビテーションを起こしたり、材料が部分的に固化してダマを形成し、攪拌効率を大幅に低下させます。
特に樹脂や高分子溶液では温度帯が数度ずれるだけでゲル化が進むため、ジャケットによる温調とリアルタイムの粘度モニタリングが不可欠です。さらに、加熱停止後に急冷すると収縮ムラが生じ、撹拌軸へ過大な曲げ応力を与える点にも注意しましょう。
「数度のズレ」が製品の品質を、ひいては企業の信頼を左右する現場は少なくありません。特に反応プロセスでは、撹拌による混合熱と反応熱が局所的に集中し、温度センサーが検知する平均温度と、翼先端やタンク壁面の温度が大きく乖離することがあります。この「見えないホットスポット」が固化(ダマ)や意図しない副反応の原因となります。
撹拌羽根の直径・形状・取付位置が、槽の径深比やバッフルの配置と合致していない場合、期待した循環流が得られずに問題が発生します。液面付近の剪断が不足すると界面に膜が生成され、泡の巻き込みや原料の付着を助長するためです。
幅広い粘度域に対応しようとして翼幅を過大にすると、低粘度時に空転負荷が小さくなり過ぎ、軸が振動してキー溝を傷める恐れもあります。装置改造が難しい場合はピッチ角可変型インペラやスロープ付きバッフルの後付けで改善でき、設計段階でのCFD解析がトラブル防止に有効です。
高速撹拌で空気が過度に巻き込まれると泡立ちが生じ、気泡が粘性抵抗となって問題が発生します。溶存酸素が増えると着色や酸化が進み、食品・化粧品・電子材料では重大な品質劣化に直結するため、注意が必要です。
泡は槽上部に堆積して液位センサーを誤作動させ、自動供給ラインを停止させる事例も報告されています。アンチフォーム剤の投入、液面直下での低速仕上げ撹拌への切替え、ディフューザー付インペラで気泡径を制御するといった対策が効果的です。
原料に繊維質や微粒固形物が含まれていると、撹拌中にインペラスリットやストレーナーに絡まり電流値が急上昇してモーターを焼損させる恐れがあります。再利用パッケージから投入するリサイクル材は異物混入率が高いため、事前のプレフィルタリングが欠かせません。
また軸シール部から微粉が侵入すると軸受の潤滑グリースを吸い取り摩耗を加速させます。シール漏れが進行すると内容液の外部漏洩だけでなく軸方向の偏荷重が増大し、さらなる漏れを誘発する悪循環に陥ります。定期的なシール面粗度測定とプリロード調整が重要です。
攪拌は、調合時と使用前に安定させるための2種類があります。調合時に関しては塗料メーカーが攪拌しているので問題が起きる可能性は低いのですが、使用前の調合、ひいては使用時の攪拌には注意が必要です。塗料は顔料だけではなく、溶剤や艶消しなど樹脂の中に含まれています。これらの成分がバランスよく混ざることで塗料として、物の塗装に使用できます。しかし長く使用していないと、固まってしまったり沈殿したりと、状態が悪化します。趣味で塗料を使用したことがある方であれば経験があるのではないでしょうか。この状態を元の状態へと改善する時も攪拌を行うのですが、攪拌が不十分な状態では改善されず、バランスの悪い塗料となってしまうのです。

独自の4カップ仕様により、最大80Lの大量処理が可能。
防爆仕様のため大量の材料を混ぜても安心
シリカ、高粘度樹脂、ワニス、セラミック増粘剤、オイル、UV硬化性樹脂など

1カップ300mlから7000mlまでの間で、中容量のラインナップが最多。
撹拌による温度上昇を抑制することができる
接着剤、フィラー、導電性ペースト顔料、酸化チタンなど

研究用コンパクト機のなかでも、100mlの小型モデルあり。
新規材料でのレシピ提案のアフターサービスあり
シール材、グリス、ガラスペースト、シリコーン樹脂、PDMSなど
2021年11月2日時点で、Google検索で「撹拌脱泡機」と検索し表示されたメーカー公式サイト19社の中から、「カスタマイズ可能」「レンタル可能」「デモ利用可能」の記載があった3社を表示しています。それぞれのメーカーが製造している機械のラインナップの特徴を基に、利用シーンをお勧めしています。
【選出基準】
多量・大容量の処理向き…一度に合計40L以上の処理を行える機械を製造しているメーカーを選出。
小~中容量の処理向き…300mlから1Lの容量で処理可能な機械を多種製造しているメーカーを選出。
小容量での開発処理向き…100mlの容量で処理できる機械を多種製造しているメーカーを選出。